研究

A theoretical chemist is a device for synthesizing papers from coffee.
理論化学者はコーヒーから論文を合成する装置である
– Rényiの言葉より改題
計算機シミュレーションは、いまではパッケージソフトウェア化されて、手軽に使えるツールになりつつあります。また、計算機の性能が飛躍的に向上し、非常に大きなシステムも扱えるようになってきました。最近では実験家の方が、シミュレーションを併用して解析を行うということも珍しくなくなりました。しかし一方で、そうして得られる膨大な情報の中に埋もれている、有用な情報をとりだす手法が確立していないので、せっかく大規模計算を行っても、結果を平均化し、2体相関関数のような低次元の相関量に戻し、実験結果と比較するといった、単純な解析しか行われていません。すべての分子の配置や動きが把握できることがシミュレーションのメリットなのに、実際にはそれをどのように特徴付ければいいかという「言葉」や「概念」が整備されていないので、滝の水を掌で受けるように、有用な情報が流れ去ってしまいます。シミュレーションで得られた膨大な情報の中に隠れた秩序を漉しとる「言葉」や「概念」を提供することこそが理論家の使命だと考えています。
我々の研究の一貫した目標は、シミュレーションで得られる膨大な情報の中に隠された重要な構造や秩序を、パターン分類や学習、グラフ解析といった情報論的な手法を駆使して、不用意に平均化せず、人間の直感力に頼らずに抽出することです。
これまで人類が発見した分子は、すべてCASデータベースに登録され、 その総数は3億種類に届こうとしています。そのなかで、水分子は小さいほうから数えて5番目の極めて小さく単純な分子です。しかし、レゴの部品を組みあわせるとあらゆるものが作れるように、水分子をたくさん集めると、分子1つでは予想もできないような変わった性質が生まれます。本研究室では、簡単な分子が多数集まることで出現する複雑な性質に興味をもち、計算機シミュレーションと理論を駆使してそのしくみを明らかにします。
研究業績に関しては、メンバーページの各人のリンクからたどって下さい。
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