vdWP theory

混合ガスハイドレートの結晶構造選択則
我々のグループの新しい論文が出版されました。 メタンや CO2 などのガス分子が水のケージに閉じ込められてできるガスハイドレート——いわば「ガス入りの氷」——は、エネルギー資源としての利用やパイプラインの詰まり防止など、実用面でも重要な物質です。ところが、2 種類以上のガスが混ざっているとき、どの結晶構造が生じるかは一筋縄ではいきません。同じ組成でも、構造によって性質が大きく変わるため、「どの構造が選ばれるか」を予測できると、実験の前に方針を立てやすくなります。 本研究では、混合ガスハイドレートの結晶構造選択則を、拡張 van der Waals–Platteeuw(vdWP)理論を用いて整理しました。まず、分子配置から機械的に不安定な空ケージ構造をあらかじめ除外する経験則(VOP)を提案し、候補を絞り込みます。次に、ゲスト分子の種類と混合比がどの構造を安定化させるかを考察し、微量の第二成分を加えるだけで相転移を起こし、新しい安定相や準安定相を探索できることを示しました。 美しい結晶構造を持つ物質としての側面と、エネルギー・環境工学への応用——その両方を見据えた理論化学の仕事です。水和物や結晶構造予測に興味がある方には、身近な題材かもしれません。 河原亘佑(本研究室OB, 2025年度修士修了), 松本正和, 田中秀樹, 2026. 混合ガスハイドレートの結晶構造選択則. 低温科学 84, 155–164. DOI:10.14943/lowtemsci.84.155 音声解説